2. スピンドルチェックポイントの解除

 

Hela細胞の有糸分裂:

動原体特異的に存在するCENP-Aタンパク質(GFP標識)の動態を生細胞で観察。有糸分裂中期にいたり、姉妹染色分体が同調的に分離する。この時期にスピンドルチェックポイントが解除されるものと推定される。

 

最後の動原体に紡錘糸が接続されることが引き金となりスピンドルチェックポイントが解除されるものと考えられています。

スピンドルチェックポイントの解除過程の中枢反応は、Mad2がCdc20/Slp1との複合体から放出されCdc20/Slp1が活性化されることでしょう。生化学的手法により精製したMad2・Cdc20複合体は試験管内では非常に堅固で、たとえば0.4M KClといった高濃度の塩溶液中でも高い安定性をしめします。一方、細胞内では有糸分裂中期から後期に遷移する短時間のうちに、Mad2・Slp1複合体は解離します。最後の動原体に紡錘糸が接続されると、堅固なMad2・Cdc20複合体をすばやく解離させる積極的な分子メカニズムが存在すると考えています。

我々はヒト培養細胞を用いてスピンドルチェックポイントの解除に関わる機構の解明を目指しています。MAD2結合蛋白質p31comet(CMT2)の解析を行い、すべての染色体が動原体を介して紡錘体と結合した後に紡錘体形成チェックポイント機能の不活性化に必要な分子であることを明らかにしました(文献2:Habu et al., 2002)。現在その制御機構をp31comet複合体因子解析により明らかにしつつあり、その結果ダイニンモーター蛋白質が分裂後期開始に重要な役割をしていること、EB1(微小管プラス端結合蛋白)がp31cometと複合体を形成することを明らかにしています。

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