4. DNA複製阻害とヒストン修飾

遺伝情報を正確に次の世代に伝えるため、染色体複製が正確に完了することが必須です。遺伝情報の恒常性が保たれなくなると、個体は発癌や老化といったプロセスへと誘導されます。そこで、種々のストレスによりDNA複製が阻害されると、細胞は一時的に複製を停止し、受けた傷害を修復後にDNA複製を再開します。この一連の反応は、DNA複製チェックポイント制御機構の活性化によって制御されています。

我々は、DNA複製を阻害するとヒストンH4のアセチル化が減少することを見出しました(右図参照)。ヒストンH4脱アセチル化酵素の変異した細胞では、DNA複製を阻害してもアセチル化が高い状態で維持され、DNA複製チェックポイントが解除されないこと、逆にヒストンH4のアセチル化部位を置換した細胞では、チェックポイントが早く解除されることが判明しています。これよりアセチル化の減少がチェックポイント解除に必須であろうと考えています。目下、このアセチル化の減少の意義とこれを誘導するメカニズムの実体を明確にすべく研究を進めています。

Figure4

(2005年、 久能により撮影)

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